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2010年05月 アーカイブ

ピアニストの病気

腕を鍵盤の位置まで上げ、その状態を保っていれば、何の運動を行なわなくとも疲労がきます。

そのためには、僧帽筋、三角筋という首、肩、背中にわたってはたらく筋肉の支えを必要としているからです。

肘を下へ落していても肘先に手の重みをかけるということは、前腕には、つねに筋肉の静的収縮が行なわれています。

これはピアノを弾くためにはあまり必要のない労力なのに、現実にはほとんどつねに、そういった筋肉の静的収縮のもとにピアノを弾いているのです。

そしてまた、動く指、強靱な打鍵をすることのできる指の訓練をしているのです。

この状態が、ピアニストの病気として問題になっている、頸肩腕症候群をひきおこす土壌となっています。

そのような状態で長時間ピアノを弾き続けていれば、手の小さい人や、筋肉の弱い人に障害がおきるのは当然なことといえましょう。

頸肩腕症候群といわれるものは、単なる腱鞘炎ではなく、本来は先に述べたような状態(上肢の挙上、保持状態)で、指を反復使用する作業に多発している職業病です。

以前は、キーパンチャー病といわれたものです。

これは手-腕-肩-背中にかけて痛みが出、ピアニストがこの病気になったら、再起不能といわれるほど、治りにくいものです。

それを防ぐためにも一番大事なことは、つねに完全弛緩状態においてピアノを弾いていくことしかありません。

腱鞘炎はこわい

単純な指の使い過ぎによっておこる腱鞘炎も、全快までに大変時間がかかるので、ピアノを弾く人には警戒しなければならない病気です。

『頭で弾く』奏法によってピアノのおけいこをしてきた人は、ピアノを弾くとは、音を聴き、頭を使うことなので、頭脳の疲労こそあれ指をいためることはありません。

しかし、指の訓練を中心にしたおけいこでは、メカニックをつけたいあまり時間を忘れてしまうので、気がついた時は手遅れになる、という危険性を充分もっています。

ちょっとしたはずみで腱を傷めた場合は、「はり」などで簡単に治ることもありますが、弾き過ぎて万一腱靱炎になってしまったのなら、とにもかくにも休ませることしかありません。

原因は、明らかに使い過ぎなのですから、炎症をとるための湿布をして、その手は絶対安静という覚悟で、しばらくピアノは捨てなければなりません。

注射などで弾きながら直そうなどと思うと、かえって辛い思いをすることになるので、覚悟をきめて何ヶ月か、時には1年位、ピアノを忘れることです。

湿布ははじめが大事で、はじめのうちは3~4時間ごとに取り変えるほうがよいでしょう。

しかし何といっても休めることが第一なので、その後はあせらず、気持を切り変えることが大切です。

症状によっていろいろなので一概には言えませんが、何ヶ月かの安静後の注射が効果てきめん、ということもあります。

また、ラドン温泉による治療は、新陳代謝を促進し、回復をはやめてくれます。

しかし、1年以上は休むつもりでその間、榊状態が悪くならないように他に目的をつくると、それもまた楽しくなるでしょう。

読書やレコード鑑賞なども、ただ漫然とするのではなく、計画的にすると興味が湧いて集中でき、思いがけない収穫になると思います。

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