ピアニストの病気
腕を鍵盤の位置まで上げ、その状態を保っていれば、何の運動を行なわなくとも疲労がきます。
そのためには、僧帽筋、三角筋という首、肩、背中にわたってはたらく筋肉の支えを必要としているからです。
肘を下へ落していても肘先に手の重みをかけるということは、前腕には、つねに筋肉の静的収縮が行なわれています。
これはピアノを弾くためにはあまり必要のない労力なのに、現実にはほとんどつねに、そういった筋肉の静的収縮のもとにピアノを弾いているのです。
そしてまた、動く指、強靱な打鍵をすることのできる指の訓練をしているのです。
この状態が、ピアニストの病気として問題になっている、頸肩腕症候群をひきおこす土壌となっています。
そのような状態で長時間ピアノを弾き続けていれば、手の小さい人や、筋肉の弱い人に障害がおきるのは当然なことといえましょう。
頸肩腕症候群といわれるものは、単なる腱鞘炎ではなく、本来は先に述べたような状態(上肢の挙上、保持状態)で、指を反復使用する作業に多発している職業病です。
以前は、キーパンチャー病といわれたものです。
これは手-腕-肩-背中にかけて痛みが出、ピアニストがこの病気になったら、再起不能といわれるほど、治りにくいものです。
それを防ぐためにも一番大事なことは、つねに完全弛緩状態においてピアノを弾いていくことしかありません。